今年の観劇メモ

1.花組.ポーの一族 2.月組.バッディ、カンパニー 3.星組.アナザーワールド、キラールージュ 4.雪組.凱旋門、ガートボニータ 5.宙組.天河、シトラスの風 6.大劇場.エリザベート 7.サンファン、キラールージュ 8.メサイア、beautiful Garden 9.エリザベート 10…

『エリザベート』 ③エリザベートの長い旅-3

<トートから見る、エリザベートの「死」>死後のこの物語によって、エリザベートの自由と愛と名誉は守られたのだろうか?死によって語り直されるために描かれた物語の中でも、キャラクターは生きている。トートもまた完璧な存在ではなかった。エリザベート…

『エリザベート』 ③エリザベートの長い旅-2

<「連れて行って」という言葉の意味>エリザベートは、幼いころから天真爛漫だった。詩が好きで、狩りが好きで、旅が好きな、夢見がちで聡明な少女だった。その奔放さが皇帝フランツに愛されるきっかけになったのだ。だがエリザベートは王家に嫁いでから、…

『エリザベート』 ③エリザベートの長い旅-1

9月の3・4日と大劇場で『エリザベート』を見る機会に恵まれた。台風の混乱はあったけれども、素晴らしい舞台だった。初めて見る大劇場でのエリザベートは、芝居も群舞も歌もすべての迫力がすごかった。 そのあと10月1日に川崎のライブビューイングで、大劇場…

③ポーの一族について / 瀬戸かずや 『FOCUS ON』

ポーの一族で瀬戸さんは、ポーツネル男爵役の際に『エドガーの孤独を際立たせるにはどうすればいいか』を念頭に演じていたという。 ぼくはエドガーを見ていて、心底から彼が孤独だと思った。仙名彩世さん演じるシーラも、瀬戸さん演じる男爵も、エドガーの義…

③『ベター・コール・ソウル』

ぼくは何度も読み返す小説がいくつかあるが、その中に小野不由美さんの『十二国記』がある。 そのシリーズの「華胥の夢」という短編集に『乗月』という話がある。王が罪に潔癖すぎて傾いていった国の話だ。国の名は芳国。王の命運は国の浮沈と共にある。その…

②『ベター・コール・ソウル』

このドラマは『ブレイキング・バッド』のスピンオフで、ソウル・グッドマンと呼ばれる弁護士の話だ。ぼくは『ブレイキング・バッド』を知らなかったが何も問題なく最初から楽しめた。前知識は必要ない。 『ベター・コール・ソウル』はシーズン4まであり、現…

①『ベター・コール・ソウル』

ここ何週間か、余計なことを言うのも書くのもしないでいようと思ってきた。それでよかったと思う。何も言葉にできないし、考えもまとまらない。そもそもぼくの考えや言葉は求められていないのだから、もう迷惑や邪魔になるようなことだけはしたくない。だか…

『庄助』というお店

5月末に兄貴といっしょに飲みにいきました。入り口のすだれをくぐると10人くらいが座れるL字のカウンター席にテーブル1つと座敷が2つある。店内はきれいで広々した年季の入った空間だ。 まず目に入るのが煮物や焼き物の大皿がカウンターの上段にずらりと…

②孤狼の血(2018)

これはご都合主義の物語ではない。大上が限界まで手を尽くしたひとつの思いが、大上を疑う日岡の軌跡を称えるというものだったのだ。人には、人を能動的に強制させる力はない。本質としての人を変えることなど出来ない。都合よく操ることなど出来ない。 ただ…

①孤狼の血(2018)

『凶悪』(2013)の白石監督最新作。監督お気に入りのピエール瀧さんは今回も元気に右翼を演じておられました。瀧さんは『64』といい『アウトレイジ最終章』といい、愛嬌ありまじめさあり怖さありで、さらに人でなしまで演じてしまうすごい人。たまむすびとい…

Death Stranding & The Last of Us PartⅡ [E3 2018] (Trailer)

www.youtube.com 老化の雨を避けながら、装備と重い荷物を背負って運び、果てしなく広大で荒廃した世界を独り歩く。見えない巨獣に追われて息をひそめ、霧に浮かぶ死霊の目をかいくぐって這い進む。常に死と隣り合わせの緊張とともに。 これが小島監督のゲー…

備忘録 5月下旬から6月上旬

・映画、舞台 孤狼の血 天は紅い河のほとり(宙組) GET OUT (2017) グレイテスト・ショーマン バーフバリ2 シェイプオブウォーター ・訪門 庄助(栃木県宇都宮市) まえだや のむさん(岡野) ・読書 ポーの一族「ユニコーン」①(flowers7月号) 孤…

『エリザベート』②トートはなぜエリザベートを殺さなかったのか?

『トートはなぜエリザベートを殺さなかったのか?』 表題を考えるために、すこし別の話をさせてもらいたい。ぼくはこのことを考えていたときに小説家の増田俊也氏の記した、木村政彦夫妻の話を思い出していた。それは実在する、戦前から戦後にかけて武道の世…

『エリザベート』①ヨーゼフのロンド

皇帝フランツ・ヨーゼフは、母のゾフィーが妻のエリザベートを王宮に適応させようと教育していることを知っていた。それがエリザベートの自由を強く束縛するものだということも。彼は結婚当初はそれが必要だと思っていたが、エリザベートの望みは違った。我…

『エリザベート』(2016 宙組)を見て 

25日に花組の博多公演『あかねさす紫の花』『Sante!』をライブビューイングで見にいきました。生の舞台を映画館で見るのも悪くないけど、レビューの時のミラーボールの光と周囲の拍手の迫力と一体感は劇場ならではの特典だと感じました。『あかねさす~』は…

②ディア・ハンター(The Deer Hunter 1978年) 

ご存知名作、ディアハンター。久しぶりに見返してしまったので。ロバート・デニーロ主演。クリストファー・ウォーケン助演。3時間の大長編です。 ベトナム戦争と帰還兵を描いた映画だといわれているが、いま見てもまったく古びてはいない。 映画の前半は、退…

①ディア・ハンター(The Deer Hunter 1978年) 

1970年代、ベトナム、ハノイ。米国との戦争の傷跡と混乱が極まる街の無法が、命がけのロシアンルーレットを見世物にする賭博場で臨界点を迎えていた。『時間がないんだ』テーブル越しにマイケルが語りかけた。ここから脱出するために目の前の男を迎えにきた…

②Happy! (2018年 Netflix)

ニックとハッピーは、ブルーのようなスラム街を体現する悪徳との対決をしなければならない。一人では立ち向かえないそれに、二人で立ち向かうための試練を超えていくのが5話と6話のラストシーンだ。その場面を見ると、よごれている心でも清らかに燃えあがれ…

①Happy! (2018年 Netflix)

よごれた大人が童心にかえるには、アル中になるか死にかけるしかない。悔い改めればなんとかなるというわけではなく、そうするとイマジナリーフレンド(Imaginary friend)ーー「if」が見えるようになるということだ。『Happy! 』はおなじみNetflixオリジナル…

②トーマの心臓

傷つけられた肉体と魂が、愛することも愛されることも諦めていた。 そんなユリスモールの中でトーマの言葉がこだまする。 『それでは死んだまま生きるようではないか。さみしすぎるではないか』 自分の苦痛の扱いに他人が抗議することほど鼻白むことはない。…

①トーマの心臓

「トーマの心臓」は、1974年発表の萩尾望都先生の漫画作品です。舞台はドイツのシュロッターベッツ。ギムナジウム、寄宿学校で少年達の送る集団生活が描かれる。主人公は愛する母親を名前で呼ぶように育てられた、奔放な少年であるエーリク。母の再婚により…

②ポーの一族について

第2回 「バンパネラ」は何のために存在するのか? 前回は「バンパネラ、ポーの一族は誰の手によって生み出された存在なのか」という問いで終わりました。 それを考えるために、ポーの一族の物語の骨子を確認してみましょう。『捨て子』である主人公エドガー…

①ポーの一族について

これから、ポーの一族の話をしていきたいと思います。漫画と舞台の両方を見て、新しく感じたことや考えたことが中心になると思います。語りたいことが多くあるので、テーマやジャンル別に何回かに渡って書いてみるつもりです。どこから読んでも分かるように…

『Road to Zepp 』 草ケ谷 遥海(アルバム)

友人に誘われて草ケ谷遥海さんのワンマンライブに行ってきた。彼女はテレビの新人発掘などの番組で何度も入賞したことのある、若手の女性歌手だ。お台場のZeppダイバーシティの会場はほぼ満員で、19時半の開演間際に着くと二階の関係者席に通された。 友人と…

マンチェスター・バイ・ザ・シー(2017)

過ちをおかした。そのために死ぬことも出来ない。苦しくてそのことを乗り越えられない。だからここにはいられない。自分が苦しいということを、人に言える。それすら自分に許してこなかったのだろう。苦しいと思うことすら許される訳がないと思っていたのだ…

シャン・レサン (新馬場)

長い会議と研修のあとに、同僚と軽く一杯という流れになり気になっていたお店に飲みに出かけた。 ガラス戸と木造りの店構えがよくて、ランチはなく夜だけオープンするワインバーのようだった。 八寸のようなつきだしの盛り合わせ、焼きソーセージと、ピザ。…

ホルモン北野 (白楽)

白楽の駅から15分ほど歩いて、先輩と3人でホルモン北野に行ってきた。お通しのポテトサラダはじゃがいもの歯応えがほどよく残っていて、ビールによくあう。ユッケは玉ねぎのスライスの小山に生のハツが並べられて、その頂上に卵の黄身が鎮座している。甘い醤…

マルドゥック・アノニマス3 (ハヤカワ文庫)

少女は言う。「あなたは優しい。沢山の人があなたに助けられたし、わたしもそうだった」手のひらの上の小さな金色のパートナーに向けて。 金色のネズミが答える。「それが『有用性』ってやつだ。俺が廃棄処分されそうになったら、ぜひその言葉を法廷で証言し…

さくら、紅かなめ

今日は天気がよかった。暖かくて気持ちの良い陽気だったので昼飯のあと家の前の道で写真を撮って遊んでいた。一眼で桜を撮っていると、子連れのお母さんや老夫婦や買い物帰りのおばさんたちが歩きながら同じ桜をスマホでぱしゃりと撮っていく。ぼくが撮りは…