『まえだや』 コロッケ定食


横浜駅地下街の端っこに、『まえだや』という定食屋さんがある。カウンター7席ほどのこじんまりしたお店だ。
そこのコロッケ定食がとてもおいしい。
俵型に丸められたコロッケがふたつと小判型のメンチがひとつ。衣はあげたてでサクサク、コロッケは中のいもがねっとりとホクホクで、ほおばると豊かな味がする。
メンチもいい。肉と玉ねぎがよく練りあわさっていて、かぶりつくとジューシーな甘味がこぼれてくる。
ソースをかければご飯がすすむし、かけなくてもそのまんまでうまいのだ。
お米もかならず炊きたてで、一度もはずれたことはない。定食屋さんでたまにご飯がはずれると泣きたくなるが、『まえだや』ではついぞそんな目にあったことはない。
コロッケをあつあつのご飯の上でふたつに割って、中のあんに醤油をたらす。2~3滴でいい。
ごはんの湯気に醤油とコロッケの香りがふわっと広がる。たまらずにその香りをほおばるように茶碗をかきこむ。
他にもキャベツが新鮮でシャキシャキだとか、お味噌汁の具がバリエーション豊富だとか、いい所はいっぱいあるが、細かいけど大事なところに女将さんの目が行き届いていて居心地が良いのだ。自分の中にいくつもの小さな『好き』が重ねられていって、そこに信頼感がうまれる。いい店だなあとしみじみ思いながら飯を食う。

 

野毛で立ち飲み屋の『福田フライ』に行ってきて『まえだや』を思い出した。
いい飲み屋は正解がたくさんあるけど、いい定食屋さんは貴重だなと思う。